「1月30日最新リポート」新型コロナウイルス騒動と中国人の動き

2020-01-30

■新型コロナウイルス騒動と中国人の動き 

1月22日に、17年前のSARSの真実を世に伝えたことで名をはせた中国の感染病の権威、83歳の鐘南山氏は、「人から人への感染が可能だ」と公言してから新型コロナウィルスに関する中国の状況は一変しました。 

25日に李克強首相をトップとなる国の対応チームが設立され、中国の国柄から、国家体制をいざ確立すれば一国のリソースを全部、感染拡大の歯止めや、感染者の治療に注ぐようになります。 

武漢市内では2か所、感染者を収容する巨大病院を1週間後に完成する予定、幸い中国は春節休暇に入ったこともあり、どの都市も市民が自宅での「籠城」を余儀なくされ、中国全土が一瞬にしてフリーズしたような状況になりました。ネット上では、人影ひとつもない上海や北京の繁華街の画像が流れていて本当に不思議な様子です。 

「マスク着用」の重要性について認知が中国全土に広まり、「マスク不足」が急浮上しました。(本当はもっと大事なのは手を顔に触れないこと、とも言われている) 

商機に鋭い中国人バイヤーは、すかさずマスクの大量仕入れに奔走するようになり、先週末には東京大阪のドラッグストアの店頭においてマスクの在庫切れが相次ぎ発生しました。千葉や静岡、栃木まで車を飛ばし、マスクを大量に仕入れるバイヤーも少なくありません。マスクの在庫切れが広がり、今は洗口液や免疫力アップの商品などの仕入れにまで広がっています。

(弊社東京オフィスの近くのコンビニでもマスクが売り切れ)

一方、中国国内では感染拡大を防ぐため、施設が閉鎖されるところが増えています。例えば、中国全土の映画館は閉められ、都市間移動の長距離バスは全部止められています。春節のために用意された映画館上映用の映画のうち、ネット系の映像サイトやAPPを運営する会社に売却され、ネットで無料でみることができるものも出ており、家での「籠城」を助けています。しかし、気分的にはシンドイようで、退屈でストレスが溜まり、その発散でネットで商品をどんどん注文する人が多くいるようです。友人たちのWechatモーメンツを見ると、化粧品がそろそろ使い切れそうなのに買いに行くこともできなくて不満が溜まっているのが分かります。

2003年のSARSは、中国人の消費行動を大きく変え、ネット通販が伝統小売業に取って代わるきっかけをつくりました。おそらく今回の新型コロナウィルス騒動でも、「中国は映画館が消滅するのではないか」と言われていることなどからも推測できるように、中国人の生活は今まで以上に「ネット」、特に「スマホ」へ依存するようになるでしょう。

また今回の騒動を経て、中国人は健康や衛生意識がさらに強まると思います。たとえば、日本人と同じようにこれから、中国でもマスクの着用や消毒剤や抗菌スプレー、洗口液、洗浄液など使用習慣は少なくとも都市部ではかなり普及するのでしょう。 

日本については、今回、非常に良い対応をしており、中国人に好印象をもたれています。たとえば日本政府は国内で見つけた感染者に対して国籍を問わず治療費用の全額負担を発表、中国に100万枚のマスクを寄付、さらに直行便の取り消しで地元に戻れなくなった武漢からの観光客への観光ビザの延長等々、いずれも中国に大きなニュースとなっており大好評です。 

関西や関東の一部ドラッグストアは、中国語で「中国加油(がんばれ!」「武漢頑張れ」とPOPを掲げてマスクの配架を増やし、割引価格でマスクを提供する店舗もあらわれ、こうした対応をみて日本に対する中国人の好感度がとても高まりました。その結果「日本は中国に1000人の医療チームを派遣した」というような良い意味での誤認識のニュースも、中国で流れています。

今年の春節は、中国人観光客の来日キャンセル、マスクなどの緊急需要に中国の購入代金が回ってしまったことなどから、インバウンド商品の売上げは一時的に下がることは想像できます。

ただし今回、17年前のSARSと大きく違うのは、中国全土の感染拡大ではなく、武漢ひいてはその周辺の「局地的に集中した感染」の様相を呈していることです。ウィルスの潜伏期間は1週間から14日間ほどと言われており、中国政府は人の移動を防ぐため春節休みを延長させています。例えば、上海では2月9日までの事実上2週間休みをつくり人々の外部接触を少なくしています。こうした状況を考えると、春節休み終了後、人の移動が始まる頃にはすでに感染者のほとんどが判・隔離されているので、今後1~2週間を過ぎたあたりから徐々に感染者が減少していき状況は落ち着いてくると思います。

日本にとってはこうした、中国人の新しい生活習慣・衛生習慣の定着、日本へのさらなる好印象、騒動の鎮静化といった動きと、それに伴い発生するであろう中国人の健康などに寄与する日本製品に対するニーズの高まりは、商機の拡大として捉えるべきでしょう。今後、商品の開発や売り方、情報の出し方などに、こうした中国人の変化を意識していく必要があると思います。

(以上)

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