中国最大国営テレビ局は日本の粉ミルクをやり玉にあげた

2017-09-26

1)日本の粉ミルクは中国国内の成分条件を充たしていないので危険とのこと

●中国最大国営テレビ局の中央テレビ(CCTV)が昨晩の「消費主張」という番組で、「並行輸入や越境ECで中国で人気になっている 海外の有名ブランドの粉ミルクが、中国の国家基準を満たしていないので、消費者は購入の際に気をつけよう」というような内容の放送をしていました。

中央テレビといえば、日本のNHKに相当するテレビ局。そのテレビ局の番組なので、影響も大きいのは間違いないです。番組では、日本の、ほほえみ (明治)、アイクレオ(グリコ/固力果)、ドイツのAptamil、オランダのNutriton、アメリカのmeadjohnson社のEnfamilとAbbott 社のSimilacの6つのブランドを中国の国家検査部門で検査し、いずれも中国の国家基準を満たしてないと報じています。国の検査機関とは、「農業部乳品質量監督検験測試中心」と「北京出入境検験検疫局検験検技術中心」のことです。検査結果として、ほほえみとアイクレオのビタミンK1の含有量がいずれも中国の国家基準の最低値より低いとのこと。細かな話としては、中国の国家基準のビタミンK1含有量は100キロジュール (kJ)に1~6.5マイクログラムでないといけないが、ほほえみは、0.59マイクログラムしかなく、アイクレオも00.87マイクログラムしかないとのこと。番組は、続けて北京大学公共衛生学院の教授に取材し、ビタミンK1含有量が低い粉ミルクを飲み続ける赤ん坊は「血液凝固障害」が起きる危険があると紹介。

さらに、日本の粉ミルクはいずれもヨウ素が中国の国家基準の最低値より低いと言っています。中国の国家基準のヨウ素含有量は100キロジュール (kJ)あたり2.5~142.12マイクログラムだが、ほほえみは2.12マイクログラムと低く、アイクレオも2.7マイクログラムと、中国の基準値に合っているが数値自体が高くない、と紹介されています。

日本は海洋国家で母親がもともとヨウ素を体内に備えているので赤ちゃんも同様とのフォローはされているが、中国はそうではないので、粉ミルクではヨウ素基準は重要とのことです。そして、ヨウ素不足だと、子供は脳と体の成長遅れを引き起こすと紹介しています。以上は、日本の粉ミルクの問題点を指摘する同番組の主な内容でしたが、番組は今夜さらに続編もあるので、弊社も引き続きウォッチしていきます。

2)しっかりと顧客をつかんでいれば少々のプロパガンダには負けない

●中央テレビは、3月15日、中国の「消費者の日」に毎年恒例で、企業の告発を特集し、視聴者の人気を得ています。今年は、日本のカルビーのフルグラが特集されました。東日本大地震による原発事故の後の輸入禁止地域で作られたフルグラを中国に輸入してケシカランとの批判でした。(実際は、番組が、製造元と販売元を勘違いしているだけでしたが・・・)

カルビーはこれにはまったくめげず、逆に今年の夏から、北海道産として、中国の越境EC天猫旗艦店で発売を開始しました。合わせて、中国の主要メディアやブロガーさんを使って北海道産フルグラを大々的にPRしました。中国人は、北海道の三文字から、豊かな自然だけでなく、「安心・安全が保障されている」というイメージも想起しますので、北海道産フルグラを前面に出すのはとても効果的です。そして、カルビーの松本会長は、「中国市場向けの越境ECで3年以内に200億円の売り上げを狙う」と意気込んでいます。ここまで書いて、天猫のカルビーの旗艦店を覗いてみました。なんと月間で4.5万人に買われており、1.4万人の購入者がコメントを書いています。

読んでみると、「毎朝子供のために牛乳に入れて食べています。本当においしい」、「もっとキャンペーンをやってください」とポジティブなものが目立ちます。中国の消費者と一生懸命コミュニケーションをとれば自社商品のどんなポイントが一番中国人に響くかはおのずとわかってきます。この「北海道産フルグラ」が1つの例かと思います。

3)市場の信頼が何よりも大切

●中国は第2子が認められ、第2子出産ブームとなり、毎年2,000万人もの赤ん坊が生まれています。中国市場の可能性は本当に大きく、多くの企業がビジネスチャンスを求めています。なので、自ら商品の良さを常に発信して、積極的に売っていかないとデマ情報に被害を受け、足元をすくわれることもあるでしょう。

このニュースの配信記事には、たくさんのコメントを寄せられています。「国によって基準が違うのはあたりまえ。こんなことを言われても私は国産粉ミルクよりも、欧米や日本の粉ミルクを信用します」といったように冷静な反応が中心で、中国人消費者もこの手の扇動的なものにはだんだん煽られなくなったようです。その背景として、今回の番組は、日本と欧米の粉ミルクを批判しながら国産の粉ミルクの「三元」「完達山」「飛鶴」の三ブランドはいずれも基準を満たしていると紹介しており、明らかに中国ブランドを擁護するために作った番組と感じられるからでしょうか。そして、消費者のコメントを読むと、何年前に起きた粉ミルクのメラミン混入被害の余韻がまだ続いており国産ブランドに対する信頼回復は道のりはまだ厳しいようです。

ぜひこの番組とそれに対する消費者の反応を参考にしながら自身が当事者になった場合の打つ手を考えていただければと思います。弊社もしっかりご協力いたします。

参考:下記中国のメインニュースサイトは同番組内容を掲載しました:

http://news.sina.com.cn/o/2017-09-06/doc-ifykuftz4970292.shtml

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