【東京フォーラム】広告と社会の複雑な関係と中国広告事情

2007-11-07

主催側の予想に反して結構の来場者がいた。日本の戦後広告史、中国とウクライナの現在の広告事情を語られたが、意外に日本の高度成長期も「大きな物語」と「鮮やかで目立つ色」が流行っていた。それがまさに今の中国であることが興味深い。

【日時】2007.11.18(日)14:30~17:30

【場所】東京国際フォーラム ガラス棟G510会議室

下記は、SGRAかわらばん 116号(2007年11月23日)からの引用((渥見財団元奨学生で当日発表者の1人のオリガ・ホメンコさんがまとめたものである)
■第29回SGRAフォーラム「広告と社会の複雑な関係」報告
第29回SGRAフォーラムは、2007年11月18日、東京国際フォーラムG510会議室にて、「広告と社会の複雑な関係」というテーマで開催されました。
SGRA「人的資源・技術移転」研究チームが担当する4回目のフォーラムでしたが、広告をテーマとしたフォーラムとしては初めてであったともいえます。
東京経済大学コミュニケーション学部教授・博報堂生活総合研究所エグゼクティブフェローの関沢英彦先生の基調講演の後、(株)中国市場戦略研究所・SGRA人的資源と技術移転研究チームチーフの徐向東さんが『中国における社会変動と企業のマーケティング活動』について語り、また早稲田大学国際教養学部訪問学者、学術振興会外国人特別研究員、SGRA研究員のオリガ・ホメンコが『ウクライナにおける広告と社会の複雑な関係~広告がなかった時代からグローバル化の中へ~』という発表をしました。
今回のフォーラムでは、日本、中国、ウクライナの広告と社会の関係が歴史的な流れの中で紹介され、お互いの共通点と違いについて考えさせられました。 関沢先生は、日本の高度成長期の小津安次郎の映画やテレビCMや雑誌広告など様々な資料を通して、その時代に形成されていた生活モデルについて語りながら、商品広告と人々の意識とのつながり、社会の中での選択の自由とのつながりを説明しました。そしてオイルショック以後、高度成長期の生活モデルが破壊し始める傾向について語りました。さらに、2000年以後の「生活モデル」はテレビや雑誌広告から町のイベントや町の中にある広告やものに転換し始めていることを指摘され、とても面白いと思いました。
徐向東さんは、来年北京五輪を開催する高度成長期の中国で、インターネットや携帯電話の使用者の急増について語りながら、中流階級を形成する一人っ子世代の若者の文化や新しいライフスタイルについて語りとても勉強になりました。それを聞いて社会主義崩壊後の東ヨーロッパとの共通点を考えました。ウクライナでも同じように、政治に無関心で消費に大きな関心を持つ若者が多いのです。まさに彼らの思想は消費主義であり、「心中階層」ともいえます。
そして中国の国内の事情をよく理解できないため中国市場で失敗する外資系企業のことも聞いてとても勉強になりました。私はロシア革命以前、それからソ連時代中の広告、また独立以降のウクライナの広告と人々の新しいライフスタイル形成のプロセスについて話しました。日本の戦後、高度成長期、また今の中国との共通点を考えながら、ウクライナの広告が女性にすすめる「偉大な母親像」と「モダンな女性」という二つの狭いモデル、またポストモダンなインターネットやメディアにあふれる情報世界に生きる人々の「個人性」をもとめる旅、またものや思考の選択の難しさについて考えました。 当初あまり参加者が集まらないのではないかと心配しましたが、結果的には51人もの参加者を得て、会場がいっぱいになりました。ディスカッションの時も、とても興味深い質問がたくさんでて大変盛り上がりました。大量生産や大量消費が生み出す環境問題や自然破壊は三つの国の広告や社会でどのように考えられているか、インターネットの力が増えて紙の新聞や雑誌を読まなくなると広告はどう変わっていくのか、また、商品購入と階級意識がその三つの国でどのように考えられているか話し合いました。商品の「可愛さ」が求められる日本の消費者に対して、「格好良さ」が求められている中国とウクライナの消費者の違いを考えながら、ものを売るための市場、文化、趣味、世代間の意識の違いやその願望の違いについての理解することの必要性について語り合いました。市場調査に加えて、文化的な理解や消費者の世界観を理解すればその市場で成功する可能性が高いということがわかりました。 今回のフォーラムは大変面白くて発表者や参加者にも大変勉強になり、広告と社会の関係をより深く考えさせられたと思います。

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