内陸女性を掴んだ中国化粧品通販の急成長

2014-06-25

■米国上場を果たした中国の化粧品通販企業

近頃、中国のネット通販が相次ぎ、米国で上場を果たしています。中国最大通販の「タオバオ」を運営するアリババ社は、米国での上場準備を進めているが、資金調達額がフェースブックを超え、ネット企業としては過去最大になると言われています。上場が成功すれば、同社に3割以上も出資した、孫正義が率いるソフトバンクは約6兆円近い資産を手に入れるでしょう。

そうした中で、5月16日に、「聚美優品」(JMEI)という中国の化粧品通販の会社もニューヨーク証券取引所(NYSE)で上場しました。

アリババのような巨大企業ほど知名度が高くないためか、日本では全く報道もされず、ほとんど知られていないです。

創業してから4年目、すでに中国の化粧品通販の2割以上のシェアを占める業界トップ。昨年では、登録顧客会員が1,000万人超、売上が4億8,300ドル(約490億円超)、純利益2,500万ドル(約25億円超)と、まさに急成長した会社です。

■急成長の秘密は内陸女性の心を掴んだからだ

この急成長の秘密は、ここ数年間の中国の社会変化と大きく関係しています。日本でもよく知られている「80後」という言葉があります。1980年代以降に生まれた一人っ子世代のことです。「小皇帝」として甘やかされているとよく言われますが、数年前から状況は大きく変わっています。リーマン・ショック直後に中国政府が行った4兆元の巨額投資のマイナスな側面が現れ、賃金の増加が物価上昇に追いつかず、とりわけ不動産価格が異様に高騰し、上海や北京の都心部ではすでに東京よりも不動産価格が高くなっており、彼らにとってマンション購入はもはや夢のようです。こうした厳しい現実を目の当たりにして、彼らは自嘲気味に自分のことを「ディアオス」と呼び、中国では有名な流行語となりました。「低収入」「負け組」というニュアンスの言葉です。特に、大都市より所得水準の低い内陸都市では、「ディアオス」と自認する若者がさらに多いと言えます。片方、中国では今、インターネットが急速に普及しています。すでに13億人の半分がインターネットを使っており、とりわけ若年層の普及率は高く、所得水準がまだ低い内陸都市の女子大生や若いOLたちでも、ネットを通じて、北京や上海で流行っている化粧品ブランドを知っています。しかし地元ではまだこれらの化粧品は売られていなく、販売されたとしても、値段が高いため、なかなか手が届かない高嶺の花です。「聚美優品」(JMEI)の創業者はスタンフォード大学留学後に、20代で同社を創業しました。中国では「海亀」と呼ばれる海外留学帰りだが、実はもともとは内陸・四川省の出身なので、内陸若者のことをよく理解しています。それは同社の独特の販売方式にも現れています。同社は人気のある化粧品ブランドを集め、自社サイトで高い割引率を告知しています。ただし数に限りがある限定販売なので、憧れの化粧品ブランドを低価格で買えると分かった若い女性が一斉にアクセス。あっという間に商品が売り切れます。これは「フラッシュセール」と言われて、このフラッシュセールを中国で化粧品通販に導入した同社は、ネット通販でお買い得商品を常に狙っている女子大生や低所得のOL層の間で、瞬く間に高い人気を得たわけです。中国では、女性は基本的に働いているため、

通販で買った商品を職場に届けてもらうことが多く、特に地方都市の若いOLが集まる職場や大学の女子寮には、同社から大量の化粧品が送られており、地元紙などもニュースとなっていました。

■日系企業もネット通販を活用しよう

所得水準が向上した中国では、化粧品市場が急速に拡大しています。化粧品大国の日本にとっては、最も重要な市場と言えますが、店頭販売以外に、通販も取り入れている日系企業はまだあまりないようです。米国調査会社Frost&Sulivanによると、中国の化粧品販売に占めるネット通販の割合は昨年すでに約10%、4年後にはさらに20%まで拡大する見込みです。上手に化粧品通販を活用すれば、大きなボリュームがありながらも、百貨店や化粧品の専売店がまだ少ない内陸の中小都市でも売上を伸ばすことができます。さらに顧客データの取得や活用など、ネットならではの利点を上手く活かすことで、広大な中国でも、たとえば東西南北の気候や風土に合わせて、それぞれの地域に合った化粧品の開発もより便利にできるかもしれません。日系企業にとっては、中国で売上規模を拡大するにはネットの活用は避けて通れないと言え、「聚美優品(JMEI)」の動きは大いに参考になると考えられます。

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