中国に登場した「リコノミクス」はどんな市場チャンスをもたらすか?

2013-07-17

■ 銀行危機で注目になった「リコノミスクス」

先月24日は、李克强が中国の首相に就任してからちょうど100日目。前日に私は上海の現地会社で仕事をしていたが、社員がどこの銀行ATMからもお金を引き出せないと騒いでいた。

後で分かったのだが、6月20日は中国の銀行間の貸借取引(リバース・レポ)の金利が異様にも30%も上昇した。要するに銀行間取引金利が異常に高くなり、銀行にお金がないように見えるのだ。

フェイスブックでこんな状況をつぶやいたら、「中国経済は崩壊するのか」と聞いてくる方が続出。中国の大手銀行はすべて国の銀行。その国の銀行が大変な状況になったにもかかわらず、李克強政府は助けようとせず事態を放置しているかのように見えたため、さらに波紋を呼んだ。

この一件で、リ(李)コノミスクス(李克強経済学)という言葉が一気に注目されるようになった。リコノミクスにもアベノミクスのような三本の矢があるとすれば、その基本はどうやら市場強化、規制緩和、供給改善のようだ。要するに市場に任せることは市場に任せ、政府のミクロ的な関与はなるべく抑えるということのようだ。

ここ数年、中国の「国進民退」が注目されている。つまり巨大国有企業がどんどん肥大化し民間企業を圧迫するようになっているのだ。国の銀行から優先的に融資を受ける大手国有企業はお金を使い切れずシャドーバンキング(影の銀行)を作って不動産投資などの財テクに走り、不良債権を膨らます懸念が強まっている。

今回の一件も、シャドーバンキング退治に向けた荒療治として、中央銀行が資金供給を絞ったために起きたのである。リコノミクス(李克強経済学)が動き始めたというわけだ。

これからの中国経済予測は日本企業にとっては非常に重要である。李克強はすでに3月の全人代で、巨大国有企業の影響力を弱め、従来、国有企業に独占されている金融、エネルギー、鉄道などの分野を民間資本に開放すると約束した。リコノミクスが目指しているのは、投資型政府ではなく、民間家計収入の増加にある。レーガン、サッチャー経済学に類似しているともいわれる。

■ ネット通販の金利は銀行よりも高い?

中国共産党機関紙の「人民日報」には、最近、「民間資本による金融業参入」を力説する論文が掲載された。作者は中国最大ネット通販「タオバオ」創業者のジャック・マー(馬雲)。ジャック・マーはネット決済サービス「支付宝(アリペイ)」の発明者としても知られている。中国の消費者はネットで買物する際、まずアリペイの口座にお金をチャージしておき、この口座から代金を支払うことができる。

ちなみに、クレジットカードが十分に普及していないため、ネット決済は無理難題だった中国では、アリペイが生まれることによってネット通販は急成長できたと言える。

6月にこのアリペイには新機能が追加された。アリペイの口座の預金に対して普通の銀行よりも高い利子がつくようになり、しかも預金の出し入れの手数料はゼロ。日本にもこんな便利で嬉しいサービスがあって欲しいと思うくらいだ。これまで中国の銀行といえば、国がやっているものだから、サービスが悪く金利も低い。消費者からは非難轟々だった。ところで民間企業が参入した途端にこんな嬉しいサービスが生まれた。今春から北京や上海は空気が悪く人々は外出を控えているため、ネット通販利用がどんどん増えている。こうなればさらにネット通販利用者が増えるだろう。

「金融分野もどんどん民間資本に開放する」、李首相のこの発言は空約束ではないのだ。中国統計局の最新発表からみると、上半期の中国のGDP成長率は約7.6%。中国は高成長から安定成長に転じているが、すぐに「崩壊」と結びつけて議論するのは早計だ。むしろリコノミクスがどんな新しい市場チャンスをもたらすか、それを早く見極めそして掴むべきであろう。ぜひ下記のセミナーでも、皆様に中国の最新情報をお届けしたいと思います。

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弊社上海現地会社近くにこの7月に開業した上海最大ショッピングモールの「環球港」
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