今回のトピック 新年のご挨拶と、この10年の振返り&ご提案

2019-01-29

2019年を迎え、もうすぐ中国最大の行事である旧正月(春節)もやってきます。謹んで新春をお祝い申し上げます。旧年中は大変お世話になり、誠にありがとうございました。

今年の2月で弊社の上海現地法人は営業して丸10年を迎えます。この事務所は、当初、2010年に開かれた上海万博における某大手日本企業の連絡窓口として弊社が準備していたのですが、途中で依頼社の諸事情により計画が変更になり、2009年に弊社の完全な現地法人としてスタートしました。(ちなみに、東京本社は2007年の創業です)そしてこれまでに、東京本社と連携してさまざまな中国市場の変化を観察してきました。

■この10年の振返り

上海現地法人ができて3年経った頃、それまで中国の百貨店などに商品を出していた日本企業から急に売上が落ち出した、という相談を受けるようになりました。この頃、日本のマーケターの中には日中間の政治問題をその原因と

してあげる人もいましたが、実は中国内における大きな社会変化に依るものです。

それはリアル店舗からネット通販への購買チャネルのシフトです。それまで百貨店などのリアル店舗で商品を購入していた消費者の多くが、ECの普及により急にネット通販へと購入経路を変えたのです。 

その動きを素早くキャッチし対応できなかった日本の企業がこの時期に多かったのです。
その後、2014年頃には、日本で訪日観光ビザの緩和、外国人の消費税免税措置などがあり、インバウンドの爆買いブームが起きました。
中国人に買われていたモノは何か?何故、日本製品が買われるのか?
よく買われていたのは、スキンケアやヘルスケアに関連するモノでした。それは品質が良い、という理由の他に、同じアジア人という理由があります。肌に付けるモノや健康関連モノは、体型、体質、肌質、肌色、髪の質、、、が似ている日本人のために作られたモノが中国人にマッチするためです。

直近の数年で変わったと感じるのは、中国で店舗をまわっていると現金を使う人を見なくなったことです。スマホをQRコードにかざしてアリペイやWechatペイなどで電子決済しており、道端の露天商までもこのやり方が目立つようになりました。以前、「個人情報を守るよりも便利さと効率を優先する」と中国大手ネットサービス企業のCEOが発言して物議を醸したことがありましたが、現状は銀行と連動したスマホ上の電子決済アプリが普及し、既にこの発言どおりの社会になっています。

昨年末に弊社にご相談の多かったインバウンドにおける電商法の影響については、大きくは出ていないようです。但し、代理購入をしている人たちへインタビューしていると、念の為に箱単位で中国へ配送していたスタイルから、個別包装で送ることを増やしたという意見を聞くようになりました。小さな単位で中国へ配送すると、個人使用とみなされ本法には触れないからです。上に政策あれば、下に対策あり!の中国人気質は健在です。 

このように10年間、中国市場はさまざまな変化がありました。

■今後の中国市場は...

市場の潜在力は相変わらず高いと思います。特に私が注目している層は50~60代の人たちです。中国のベビーブーム時代の層で人数が多く、大学で教育を受け、知識があり、ネットを使うことに慣れている人たちです。中国が貧しい時代から豊かになった時代にかけて激しく働き、不動産を中心に多くの財産を持っている世代でもあります。一方で、激しく働いたが故に身体に故障を多くもっており、糖尿病や高血圧な人が多く、煙草や空気汚染で肺を悪くして

いる人も多いです。

こうした人たちに、ヘルスケアやスキンケア分野で注目されている日本製品は先に述べた理由で、受け入れられていくでしょう。

また、日本のバブル後のように経済が安定期に入ってくると、自分磨きと家庭生活の充実に意識が向き、今後はヘルスケア、スキンケア関連品とともに新しい生活用品も注目されるのでは、と思っています。実際、日本ではバブル後に御香やフレグランス品が流行りましたが、最近、中国では香りのついた生活用品が売れはじめている事例が出ています。日本のバブル期とその後を見直すとわかりますが、どのような景気状況においてもヒット商品は存在します。ヒット商品からその裏にある消費者ニーズを探索し、自社品の開発や販促方法に活かすことは有効と思います。

それと、ニュースでも盛んに取り上げられていますが、米中貿易摩擦の影響もプラスに働く可能性があります。アメリカの圧力で中国が関税引下げなど外国製品の取扱い障壁を緩和していけば、とりわけ一般貿易よりも自由度が高い越境ECによるビジネスが盛んになるのではないかと思います。これが観光客の往来と連動し、インバウンドで(訪日時に)実物を見て商品を体験し、気に入ったら越境ECでリピート購入という流れが、ますます活発になる可能性は高いと思います。

■日本企業に弊社からのご提案

・スマホを使いこなす世代に注意を向ける。

中国はスマホで商品情報を調べ、スマホで買うことが活発であることを考える必要があります。例えば、70代以上のお年寄りへ商品を売りたい場合でも、こうした高齢層はTVや新聞など国が管理する官製メディカからしか情報を

とれないので、商品情報を発信するべきは彼らの子供や孫になります。スマホが使える子供や孫を介してお年寄りへ情報を届け買ってもらうことを考える必要があります。

・圏子(チェンズ)へ丁寧に情報を流す。人口統計からセグメントし、ターゲティングして、そこへ商品情報を流すよりも、中国人がさまざまなテーマにより形成しているグループ(圏子=チェンズと呼んでます)を探し、商品情報を丁寧に流すことが効果的です。多民族で、世代や地域による考え方や習慣も大きく異なる中国では、日本でおこなわれてきたSTPマーケティング(セグメンテーションし、ターゲティングし、対象品をポジショニングした上で市場投入する)は弊社の経験では効果が出にくいように思います。これについては、コーゼーションとエフェクチュエーションという、最近、マーケティングや経営学で注目されている考え方を基に、市場の現場からの情報と合せながらロジックを研究中です。

・現地事情を考慮する。

例えば、ウコンを入れた健食などは日本では"飲み会のお伴"のような表現で二日酔い緩和を連想させるように広告で謳うことが多いですが、中国では二日酔いに効く方法は民間療法も含め山ほどあるので興味を持たれません。

中国人が興味をもつのは「肝を守る」といった内容です。なぜなら中国人はB型肝炎ウイルス保菌者が多いという事情があるためです。現地事情を考え消費者へコミュニケーションをとることが重要です。また、こうした表現を直接的にするのは日本企業の場合、薬事法などの問題で難しいことが多いですが、中国企業や韓国企業はこうしたことはどんどんやってしまうので、日本企業は遅れをとらないように対応策を考えておく必要があると思います。

・消費者目線で興味をもたれる商品情報を流す。

日本企業は品質のよいものを作るのですが、その商品情報を市場へ流すスキルは中国や韓国、欧米企業のほうが上手い場合が多いように思います。某アメリカ企業は、中国消費者の間で自然発生した、某商品に付けられたニックネームを当該品の正式な広告に使い注目を集めています。消費者目線での訴求が重要です。それを考えるためには、弊社では消費者と直接、ディスカッションすることが重要と思っています。弊社ではリサーチだけでなくプロモーション活動においても、中国の消費者とディスカッションする場を設け、消費者・企業担当者・弊社スタッフがひとつの空間で商品の訴求方法を一緒に考えるようにしています。

・電子決済に対応する。

アリペイなどで電子決済する社会で生活しているのが現在の中国人です。これに対応することはインバウンドも含め、必須といっても過言ではないと思います。

・囲い込みは効果がないことが多い。

日本企業の特徴で、「自社品のブランドロイヤリティを高めるため顧客を囲い込もう!」と考える場面に出会いますが、そのために登録依頼され発行される顧客IDやパスワードなどに中国消費者は面倒、不便を感じており、商品への興味を失って逆効果になっていることが多いようです。

自国製品や外国製品が次々と上市される中国市場ではプロダクトライフサイクルが短くロングセラーになる商品はないと言っても過言ではないので、顧客囲い込みを考えるよりも新商品を気軽に試せる機会をたくさん作り、消費者と商品の接点を増やすことが大切と思います。新商品といってもまったく新しいモノでなくとも、韓国製品など中身は変えずパッケージだけを変えて新鮮さをアピールし上手くいっている例もあるので、こうした方法も参考にすると

よいと思います。

以上、お役に立てることがあれば幸いです。

貴社の益々のご繁栄をお祈り申し上げますとともに本年も倍旧のお引き立てのほどひとえにお願い申し上げます。

平成三十一年一月

株式会社 中国市場戦略研究所 社員一同

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